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mike597

親父は鯵を卸していた

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親父は鯵を卸していた

親父が魚の下処理をしたのは夕食の後片付けが終わった午後九時過ぎからだった。その殆どは冷蔵庫に入れられていた。下処理をするのは鯛と鯵だけだった。冷蔵庫から取り出して改めて見ているとどれもが新鮮そのもの。見た目にも美味しそうだと親父は言っていた。
 
親父は最初に鯛を処理しようと愛用のまな板に古新聞を敷いた。すると親父は部屋に来て私と円夏に魚を卸す事を知らせた。私は親父の卸す姿を見たいと思い円夏と一緒に眺めていた。その姿は小さい頃、物珍しい事があるとじーと眺めている子供の姿に似ていた。実際に母が処理している事は何度も見ていたが、親父がするのを見るのはこの日が初めてだった。
 
「えー、これが鯛なの。もっと赤いと思っていたら綺麗なピンク色だね」
円夏が親父の横で話し掛けてきた。
「お父さん、手で触ってもいい」と、
私が言うと親父は肯いた。私は直ぐに触ってみた。
「夏帆に円夏、手に触ると臭いが着くからな」
「でも見ているだけで美味しそうだね」
「夏帆もやって見るか。学校では習ったんだろう」
「こんな実習は無かったよ。それに進学校でしょう。そんな暇が有れば宿題がたくさん出されるのよ」
「それならお父さんが捌くから、二人で黙って見ていなさい」と言うと、
親父は鯛の鱗を包丁で優しく撫でるようにこそぎ落とした。鯛の鱗は当たりに散った。直ぐにお腹の部分を包丁で裂くとエラや内臓、血合いを取り除くと直ぐに冷水の入ったボールに入れて洗い落した。それを再びまな板に乗せキッチンタオルで水を拭くと頭の部分を切り落とした。次はお腹の当たりに包丁を水平に中骨に達するまで入れた。背中の当たりを同じように水平に中骨まで入れると、包丁の向きを変えて尾を押さえ中骨と身を切り離すと鯛の半身が完成した。
これは俗に言う『三枚おろし』と呼ばれる技だった。その後、お腹の中骨を取り除き、中央の部分から切ると皮を剥がした孔聖堂中學好唔好
 
「お父さん、これが『三枚おろし』でしょう。いつ習ったの」
私は親父の魚捌きを見て驚いたように聞いた。
「何時だって良いじゃないか」
「そう言えば私が知らない間に料理教室にも通ったんでしょう」
親父は鯵を卸していた。
「あれは何年前かしら、学校から戻って来たらお母さんに話していたのを聞いたの」
「そうそう思い出した。私が小学校五年の時じゃない。魚をたくさん買ってきて練習していたでしょう。失敗した魚を毎日食べていたのよ。煮魚にしたり、焼魚にしてね。あの頃、もう飽きるくらい食べたのよね」と、
円夏も思い出したように話した。
「それにお弁当にも入っていたのよ。鯵フライだったけど、あの時は驚いたわ」
当時、中学二年だった私や兄のお弁当にも入っていたからだ。
「でもあの頃と比べて格段と腕を上げたね。ねぇ、親父」
私は父の腕を褒めると肩を叩いて部屋に戻った。ところが円夏だけは最後まで見届けていた孔聖堂中學好唔好
 
次女の円夏が戻って来たのは予定よりも早かった。帰ると直ぐに部屋で着替るとテーブルの椅子に座った。その姿は、ディズニーキャラクターの摸様が入った真白なTシャツに膝上までのジィーンズだった。親父は急いで一人分を追加しテーブルに並べた。そこには全部で四つの丼が並べられていた。
 
海鮮丼には全部で三種類の刺身が白いご飯の上に並べられていた。熱々のご飯の上に大葉が引かれ、昨夜捌いた鯛と鯵、それに朝魚屋さん買ってきたイカの三種類のお刺身だった。それに鯛の荒の味噌汁だった。味噌汁にはレモンの薄皮を刻んだ物が載せられていた孔聖堂中學中六
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